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基礎知識・用語解説

TDMの基礎知識

PK-PDパラメータとバイオマーカー

 ここでPK-PDパラメータやバイオマーカーについて解説しておきます。
 前述したようにTDMでは血中濃度を指標に投与設計を行うことが多いのですが、組織における受容体数の違いやその他の様々な因子によって、血液に存在する薬物量が同じでも組織における反応性は異なり、個人差を生じます。そのため、薬物の用量と血中濃度を紐付けるPK(Pharmacokinetics)モデルと作用部位における薬物濃度と効果を関係付けるPD(Pharmacodynamics)モデルを組み合わせたPK-PD解析によって、血中濃度の指標(PKパラメータ)と効果(PDパラメータ)との間にどのような関係があるのかを見つけることが必要です。例えば抗菌薬投与において同じ血中濃度であっても、菌のMICが異なれば抗菌薬暴露後の生菌数に差が生じるため、血中濃度から効果を予測するためにはMICによる補正が必要となるわけです。アミノ配糖体系の抗菌薬では、その殺菌効果はCmax/MICに相関することが知られ、Cmax/MICを指標とした投与設計が行われますが、Cmax/MIC比のように、PKとPDを関連付けるパラメータをPK-PDパラメータと呼びます。
 臨床でよく使用されるのは抗菌薬のPK-PDパラメータでAUC/MIC、AUIC、t>MIC、Cmax/MIC(Cpeak/MIC)などがあります。AUC/MICは定常状態における総AUCのMICに対する比率で、血中濃度曲線下面積をMICで除した値です。AUICは定常状態におけるMIC以上の血中濃度曲線下から算出されたAUCのMICに対する比率で表されます。
 AUC/MIC、AUICは定常状態における24時間値として算出されます。t>MIC(time above MIC)は定常状態において、MIC以上の濃度が維持される時間(t)の投与間隔に対する割合(%)を示します。Cmax/MIC(Cpeak/MIC)は定常状態におけるCmaxまた はCpeakに対するMICの比率です。

 バイオマーカーは古くからある言葉ですが、ある意味その捕らえ方は様々です。FDAのFrameworkはバイオマーカーの位置づけをクリニカルエンドポイント等も含めて以下のように定義づけています。

A characteristic that is objectivelymeasured and evaluated as an indicator of normal biologic processes, pathogenic processes, or pharmacologic responses to a therapeutic intervention.
バイオマーカーとは生物学的プロセスや病理学的プロセス、あるいは治療に対する薬理学的な反応の指標として客観的に測定・評価される項目である。
Clinical Endpoint Definition; A characteristic or variable that reflects how a patientfeels, functions or survives (Note that, except for survival, all these involve some sort of intermediary measurement).
クリニカルエンドポイントはある種の仲介的な測定項目を含んでいるが、患者がどのように感じて、機能してあるいは生きてゆくかを反映する、最終的な目標となる指標であり、バイオマーカーはクリニカルエンドポイントを客観的に代替しようとする指標である。
A biomarker intended to substitute for a clinical endpoint. A surrogate endpoint is expected to predict clinical benefit (or harm, or lack of benefit) based on epidemiologic, therapeutic, pathophysiologic or other scientific evidence.
また、サロゲートエンドポイントは疫学的、治療学的、病態生理学的あるいは他の化学的な根拠に基づき、臨床的な有益・有害事象などクリニカルエンドポイントの発生予測を推定しようとする指標である。

 例えばクリニカルエンドポイントが脳卒中の発生であった場合に、サロゲートエンドポイントとして測定される血圧は因果関係から推測されるものであって、必ずしもクリニカルエンドポイントの指標として客観的ではなく、臨床的なアウトカムに完全に相関しない場合があります。これらは言葉の定義に関する概念であり、同じ測定指標であっても、捉え方の違いによって指標の位置づけが異なってきます。
 臨床分野におけるバイオマーカーの具体的な例として心電図、PETの画像、血清化学物質、血液中の自己抗原、骨密度測定、肺機能試験、新生児のアプガースコアなどがあげられ、診断、病期分類、病態指標、介入による臨床反応のモニターや予測など に使用されています。
 近年、ゲノム解析やプロテオーム解析が進んできたことによって、DNAやRNA、生体蛋白等に関連したさまざまなバイオマーカーが見出され、遺伝子診断等に基づいた治療の個別化にも利用されています。CYP2C9や2C19、2D6などの薬物代謝酵素の遺伝子 多型はTDM領域でも利用されるバイオマーカーの一つです。抗てんかん薬のフェニトインは非線形性を来たす薬物で一定濃度を超えると急激に血中濃度が上昇しますが、本剤はCYP2C9や2C19の変異株により血中濃度上昇が見られるため特に注意が必要で す。グルクロン酸抱合に関与するUGT1A1などは、抗がん剤の副作用を予測するためにSNPs(一塩基変異多型)解析のキットとして製品化されています。重篤な下痢を起こし死亡例も報告されているカンプトテシンなどに使用されます。
 従来の血中濃度モニタリングに加え、PK-PDパラメータや分子レベルでのバイオマーカーを取り入れることで、TDMはより治療の個別化が図れるようになりました。

(木村利美)
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